[Yagura] 矢倉・▲3七銀戦法の基礎の基礎

矢倉の形は知っているが、戦い方を知らない人のために、ごくごく簡単な矢倉の狙い筋を、現在主流の▲3七銀戦法について説明します。譜面の画像がたくさん入り、重いページになっていますが、御了承下さい。

[Under Construction] 工事中です。せめて棒銀の狙いは書かないと…。


* 矢倉への入り口

* 矢倉が嫌いなら!!

矢倉なんか大っ嫌いだ! 矢倉はこの世の中から無くなってしまえばいいと思っている、矢倉が苦手なあなた。そう、そこのあなたです! あなたのような方のために、相手が矢倉で来れば必ず雁木を指して戦う「管輅雁木党」を紹介しましょう。管輅さんは"矢倉撲滅友の会"の会員でもあります。

-> 管輅雁木党の館

私は矢倉が大好きです。相手が雁木で来たら矢倉に組むというくらいなもので…といっても、もちろん、相手の形によって変化があるんですけど…まぁとにかく、矢倉党です。

このページは矢倉を指したい人のためのページです。でも、矢倉が嫌いでやっつけたい人の役にも、たつかもしれません :-)

* 矢倉で心がけていること

アマチュアの私が偉そうに語るのもナニですが、まあそれはともかく、矢倉を指すとき私は次のことに気をつけています。

* まずは形から

[矢倉▲3七銀戦法の出だし1]
基本図1
[矢倉▲3七銀戦法の出だし2]

上の2つの図面は、矢倉で先手が▲3七銀と指した局面です。上がいわゆる飛先不突矢倉で、現在の矢倉の主流です。下は"24手組"という、飛先不突矢倉がはやる前の形からの3七銀です。このページでは、上の飛先不突のパターン(基本図1)に絞りますが、▲3七銀戦法を採るのであれば、特にアマチュアのレベルでは、どちらの手順でも大差ありません。

▲3七銀の形にする狙いは、およそ次のとおりです。

  1. 3筋の歩を、角で交換する(▲3五歩 △同歩 ▲同角)。その後、角を2六 または4六の位置に据えて、矢倉崩しの理想形を作る。
  2. ▲2五歩〜2六銀から、棒銀に出る。
  3. ▲4六銀、3七桂の形を作る。これも矢倉を攻める理想形の一つです。

ここで大切なことは、相手の形に合わせて作戦を決める、ということです。基本図1からの後手の指し手はいろいろ考えられますが、もっとも多いのは△6四角と出る手。次は△4三金右と矢倉城を作る手です。このページではこの2つのパターンに対する、先手の指し手の基礎を説明します。

ただしその前に、まずはこの「基本型」に至るまでに考えられる、主に後手からの変化技を、いくつか見ておきます。

* ここに至るまでに (変化技など)

「基本形」にたどり着くまでにも、主に後手から急戦に出る変化を中心として、たくさんの変化があります。その一部を紹介します。アマチュア級位者の方でしたら、変化をすべて覚えようとするのではなく、矢倉の弱点や崩し方、そしてそれを避ける方法をつかんで下さい。ポイントは、

などです。順番に説明します。

矢倉崩し専用の陣形

相手の陣形を見ずに、何がなんでも矢倉に組もうとする方は、最低限この節をお読み下さい。

アマチュア級位者、特に5、6級ぐらいの方の中に、初手からとにかく矢倉囲い (金矢倉)を作って入城し、それから戦いを起こそうとする方を見受けます。矢倉は固い囲いだと信じているのでしょうが、そういう方は私程度のレベルの者から見ても、はっきりいって「カモ」です。まずは下の図をご覧下さい。

[矢倉崩し専用陣形]

後手の陣形が、矢倉崩し専用の陣形です。「理想形」とも呼ばれます。これは極端な例なのですが、相手の陣形を見ずにとにかく矢倉に組む人相手ですと、実際にこの形に組めることもあります。このページの下の方で、矢倉崩しの理想形がいくつか出て来ますが、それと比べてもこれは特別です。

この形から、△8五桂 ▲8六銀 △6五歩、と仕掛けます。この歩が取れないのはお分かりですね。金矢倉は▲7七にある銀が動くと、6筋の守りが金1枚になってしまいます。そこを飛車・角・銀の3枚で攻めるのですからたまりません。そのうえ、先手側から後手を攻める手段が全くないのが辛い。△8五桂に対し▲7七の銀を動かさなければ、しばらくは耐えることができますが、いずれにせよ一方的に攻められ続け、どんどん不利になります。

矢倉に組むときは、相手の陣形にも気を遣いましょう。相手がこの理想形に組もうとしていると分かったなら、矢倉の城に入ってはいけません。矢倉に限らず、基本的に王様が角の筋に入るのは危険です。私の場合は、次のような手順を守っています。(先手で矢倉を指す場合)

矢倉は序盤からの微妙な駆け引きがあり、そこがおもしろいんです。とにかく一目散に王様を囲ってから戦いたい方には、矢倉よりは振り飛車をお勧めします。美濃囲いか穴熊に囲ってから、思う存分戦ってください。

後手急戦の一般論

上の「矢倉崩し専用陣形」とまでは行かなくとも、「基本形」にたどり着くまでにはたくさんの変化があります。主に後手から急戦に出る変化です。後手が急戦好きの場合や、ガッチリ組む矢倉に自信が無い場合には、変化技で来る可能性が十分にあります。(実際、私もよく急戦を使います。)なおもちろん、先手から急戦に出ることもあります。

矢倉の道を極めようと思ったら(?)、急戦対策も知らないと困ります。が、急戦はいくつものパターンがあるので、すべてを覚えるのは難しいでしょう。私もいくつかのパターンしか覚えていません。とりあえず次のパターンは、ちょっとでも覚えておくといいでしょう。

もしも矢倉の急戦を覚えたいのでしたら、個人的には、米長流の急戦矢倉がお勧めです。うまくはまると破壊力絶大です。先手から急戦に出るのでしたら、 2枚の銀を4六と6六に出て攻める、二枚銀急戦と呼ばれる形が有力です。

矢倉早囲い

矢倉早囲いとは、矢倉を組む手順を変えることです。囲いを作る部分だけ取り出すと、次のようになります。

つまり角の移動の手間を1手省いて、そのぶん囲いを早く組み立てよう、という手法です。下の図は、早囲いに組んでいる途中の図です。

[矢倉早囲い途中図]

早囲いの途中では、図のように左の金がまだ下にいて王様がその上にいるので、上からの攻撃に弱い、という欠点があります。したがって、相手が上から攻めてきそうなときには、この形は危険です。たとえば上の図の場合には、△5二飛車と回る矢倉中飛車で攻められると危険です。

私も、相手が早囲いにしようとしたときには、断固、急戦に出ます。矢倉早囲いというのは10年ほど前にはやった指し方ですが、これに対して米長流急戦矢倉で攻めると、かなりいい加減な攻めでもたいてい勝てます。

たまに後手番で、▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 から矢倉早囲いを目指す人がいますが、私はこれは無謀だと思います。先手で米長流の急戦を出せば、一方的に攻め続けて完勝できます。少なくとも私は負けたことがありません。

というわけなので、矢倉の初級者は早囲いを避けた方が無難 だと思います。厳密には、相手が急戦に来そうにない形であれば、早囲いも使えるのですが、その見極めは「基礎の基礎」のレベルを越えるので、このページでは説明しきれません。興味がおありでしたら、参考書を当たってください。

* ちょっと脱線: 矢倉は難しい? 矢倉向きの人っているのかな?

矢倉の魅力は、序盤から広がる無限の構想と変化、中盤の駆け引き、そして終盤のぎりぎりの攻め合い、叩き合いです(一部、佐藤康光名人の本からの受け売り)。いろんな変化がある、という点では、難しいといえるでしょう。また、変化の幅が広いので、自分の知らない変化に誘導されて、作戦負けになりやすい。だから矢倉を敬遠なさる方もいます。気持ちは分かります。

逆に、相手の知らない形に誘導できれば作戦勝ちにすることもできます。知識や研究の量を生かせる戦形だとも言えます。ですから、研究熱心な方、記憶力の良い方、序盤で作戦勝ちし、一方的に攻め潰したい方にはお勧めします。また、お互いに作戦勝ちを目指しての、序・中盤の微妙な駆け引きも魅力です。

あ、それと、飛車より角が好きな方にはお勧め :-)


* 基本パターン: △4三金右 → 3筋の歩交換

もう一度「基本型」に戻り、そこから話を進めます。まずは△4三金右と、後手が矢倉城を作るパターンから説明します。この場合には、3筋の歩を角で交換し、角を攻撃しやすい位置に据える、という狙いで戦うのが基本です。

[矢倉・▲3五歩の局面]
▲3五歩の局面

△3五同歩 ▲同角 △4二角…と素直に(?)進めば、以下の局面を目指して駒組を進めます。

* 矢倉崩しの理想形: 夢のまた夢

[矢倉崩し理想形その1]

もっとも理想的には、この図の形になれば、必勝です。ここからの手順は、▲4五歩 △同歩 ▲4四歩 △同銀 ▲4五銀 △同銀 ▲4四歩…と攻めます。争点を4四の地点にするのがポイントです。▲4四歩に対して金がよけたら▲4 五桂馬と跳ね、銀を取って4三の地点に打ち込んで、金を取って▲8三金…、あとはもう楽勝でしょう。

しかしこの形には問題があります。手数がかかるので、この形に組み上がる前に、相手に先攻されるのです。相手の出方にもよりますが、まずこの理想形には組む暇がない、と思って下さい。とはいえ、理想形とその形からの攻撃方法を覚えておくのは、矢倉の弱点を知る上でプラスになります。

この形でのポイントは、相手の△3三の銀を動かすことで、△4四の地点の守りが弱くなる、という点です。 「矢倉崩し専用の陣形」の節で紹介した形も同じ狙いでしたね。金矢倉では銀を動かして4筋を攻める(後手から攻めるなら 6筋)、という方法を、一つのパターンとして覚えておきましょう。

* 矢倉崩しの理想形: もうちょっと現実的な形

[矢倉崩し理想形その2]

上の理想形は無理だとすると、この図のように▲4六角・3六銀の形を目指すのが現実的です。アマチュア級位者どうしの矢倉戦では、上の▲3五歩の局面から△3五同歩 ▲同角 △3四歩、と単純に指す人が多いので、▲4六角の形が簡単に実現します。

▲4六角・3六銀の形から、桂馬を跳ね、できれば1筋の端歩を突き越した形で、▲2四歩と攻めます。この歩を何で取るかで、攻め方が変わります。

いずれも、しばらくは攻めが切れません。うまく指せば一方的に攻め潰せます。気分爽快。試してみよう!

私の場合は、上の▲2六角の形の理想形に組んで攻め勝ったことはほとんど無いのですが、下の▲4六角の形に組んで攻め勝ったことは何度もあります。この形まで組めれば、たまに攻め切れずに反撃を食らいますが、まぁたいてい勝ちます。

* 後手の対策(1): ▲3五同角に△4五歩

先手が理想形に組めればたいてい勝てる、となると、当然ながら後手は理想形に組ませないように手を尽くします。まずは3筋の歩を交換した直後に△4五歩と突いて、角を4六の位置に引かせないようにする手があります。

[矢倉・△4五歩の局面1]

この場合先手は▲5七角と引き、△5三銀と来たら▲4六歩〜▲4八飛車と4筋から押し上げる。△6四角と来たら、いったん▲1八飛車と寄って(または▲6五歩 △7三角の交換を入れてから▲1八飛車と寄る)角筋をかわし、その後で相手の角をいじめに行く、という作戦で戦います。先手に分のある戦いですが、上の理想形に組んだときほど簡単には勝てません。

この辺の変化は「基礎の基礎」とはとても言えないので、このページでは解説しません。興味のある方は参考書をご覧下さい。

* 後手の対策(2): ▲3五歩にすぐ△4五歩

上の対策よりも面倒なのが、▲3五歩とつっかけた手に対してすぐに△4五歩と突かれることです。

[矢倉・△4五歩の局面2]

一見、▲3四歩 △同銀 ▲3五歩 で銀を殺しに行ってよさそうに見えますが、そこで△6四角と出られると困る。以下 ▲3四歩 △3六歩 ▲4六銀 △同歩▲同角 △同角 ▲同歩 △4七角(王手) の進行は先手が不利です。したがって図の局面から ▲3四歩 △同銀 ▲6五歩 などの手順が考えられます。

この辺の変化は、上の「対策(1)」以上に複雑で、基礎の基礎とはとても言えないので、このページでは解説しません。興味のある方は参考書をご覧下さい。


* △6四角の場合

* 後手の対策(3): ▲3七銀に△6四角で牽制

さて、上の理想形に組めるのは、3筋の歩を角で交換できたときです。後手としては、そもそも3筋の歩を突かせないように牽制する手があります。それが▲3七銀に対する△6四角です。

[△6四角の局面]

まかりまちがって▲3五歩などと行くと、△同歩 ▲同角 △3六歩、と痛い目に合います。飛車か銀のどちらかを取られてしまう。したがってこの形のときは、 3筋の歩交換はせず、別のパターンの攻めを狙います。この局面での選択は、主に次の3つです。

このページでは、△6四角に▲6八角から王様を矢倉に囲って、それから戦いはじめる方法だけを説明します。

* これはやっちゃダメ! ▲4六歩

後手が△6四角の形にしたとき、相手の角筋を止めるために▲4六歩と突く人がいますが、これをやるのはたいてい作戦負けになります。自分の角筋が止まり、銀の進出方向が一方に限定され、攻めが遅くなるからです。銀が3七にいると、桂馬も使いづらいのです。▲4六歩と突くなら、はじめから▲4七銀・3七桂馬の形を目指した方がまだましです。 ▲3七銀戦法で▲4六歩と突くのは、次の3つのパターンのときだけです。

…と書いたのですが、98年12月11日に行われた、A級順位戦(名人挑戦リーグ) の森下 卓 八段−島 朗 八段の対局で、先手の島八段が▲3七銀戦法から、▲4 六歩を突き、以下▲4八銀〜4七銀〜3七桂馬、と陣形を組み直して戦う趣向を見せたそうです。中盤の構想に問題があったそうで、結果は負けてしまいましたが、作戦自体は成立するようです。

* △6四角・▲6八角からの局面、基本形

[矢倉の基本形2]
基本図2

基本図1(▲3七銀の局面)から、△6四角 ▲6八角 以下、先手が矢倉に入城したのが上の局面です。最終手は△8五歩ですが、この手に変えて△2二玉や△9四歩も考えられます。(最近は△9四歩が多いと聞いています。)

(この項未完)


* 基本パターン: 棒銀

[Under Construction] この節はまったく不完全です。

たとえば相手が玉側の端歩を突いてきたら、棒銀から端を攻めるのが矢倉の基本パターンです。

ちょっと脱線:  「矢倉囲いに端歩を突くな」とは、棒銀から端を攻められると困るので出来たことわざです。棒銀に来られる心配がなく、逆に▲2五桂と桂馬が跳ねて来らたとき(来られそうなとき)は、その桂馬を端に成り捨てられるのが嫌なので、端歩を突いた方が得です。

王様を矢倉に囲わないまま、棒銀で攻めて来る方もたまにいらっしゃいます。なるべく早く攻め込みたいのでしょうが、はじめうまくいっても反動がきついので、やめた方がいいですよ。


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工学院大学機械工学科流体研

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金野 祥久  konno@researchers.jp

Last modified: Wed Nov 1 18:10:22 JST 2000